「終止符のない人生」反田恭平著幻冬舎刊


2022年9月のおすすめ本
「終止符のない人生」反田恭平著幻冬舎刊。

著者は、日本人として51年ぶりのショパン国際ピアノコンクール2位の快挙。自身のレーベル設立、日本初“株式会社”オーケストラ結成、クラシック界のDX化などで脚光を浴びる若き天才。次代の革命家でもある。

〇「指揮者になることは、小さいころからずっと目標だった。音楽家としての一つの理想像はピアニストでありながら指揮者を務めることだと思っている。70歳、80歳になっても円熟の大指揮者として人々に感動を与える人生を歩みたい」と。

 こぼれ話。

〇ショパンの心臓

20年間自分の祖国に帰ることができなかったショパンは、39歳の若さにしてパリで息を引き取る。彼は「自分の心臓をポーランドに持ち帰ってくれ」という遺言を残した。遺言どおり、ショパンの心臓はポーランドの教会に埋葬されている。170年以上経っても彼の心臓は腐らない。コニャックらしき強烈なお酒につけられているからだ。DNA鑑定の技術が発達している今であれば、ショパンの本当の死因がなんだったのか調べられる。肺結核が死因だと長く語られてきたわけだが死因は別なのかもしれない。ポーランドの一部の人は「心臓をDNA鑑定すべきだ」と主張している。

〇クラシック音楽をもっと世間にひろめたい 
ジョン・ウイリアムズといえば、「ジョーズ」「未知との遭遇」「スーパーマン」「スター・ウオーズ」「インディー・ジョーンズ」「ハリー・ポッター」などの数多くの映画音楽を手がけてきた映画音楽のリビング・レジェンドだ。米寿(88歳)の誕生日を迎えた2022年にも、彼は現役でステージに立って指揮を執る。クラシック音楽はちょっとハードルが高いなと感じる子供であっても、「ハリー・ポッター」やディズニ—アニメ、「新世紀エヴァンゲリオン」や「鬼滅の刃」の音楽を聴けば皆が熱狂する。第1部はスタジオジブリのアニメ音楽や映画音楽、第2部はクラシック音楽と趣向をこらしたコンサートを企画するのもいい。
〇アメリカのボストン交響楽団はとても格式のあるクラシックの名門オーケストラであり世界的に名前が知られている。この楽団が、オフシーズンになるとボストン・ポップス・オーケストラに様変わりすることをご存じだろうか。超一流のオーケストラが野外コンサートを開き、誰もが耳にしたことがある映画音楽を演奏する。リラックスした人々が「ヒューヒュー!」と大騒ぎして老若男女が音楽を楽しむ。
〇NHKで「駅ピアノ」「空港ピアノ」「街角ピアノ」が放送されてから全国各地でアスリートピアノが置かれる場所が増えた。そのピアノを弾く動画を自撮りしてユーチューブに載せて人気を博している人もいる。ストリートピアノがはやるよりずっと前から、武井壮さんはこうおっしゃっていた「オレだったらグランドキャニオンにピアノをもっていくよ。そこで反田君がピアノを弾いて、ドローンを飛ばしてMV(ミュージックビデオ)を作る。『反田恭平と行くグランドキャニオンの旅』をオンラインで企画するんだよ。コロッセオの前にピアノを置いて、イタリアの音楽家の作品を弾いたっていい。言語が通じなくても伝わる音楽という武器があるんだからそうやって世界中を音楽でつながないとなと」。⇒著者のクラシック音楽を広める情熱・工夫は尽きることがない。
〇魔法使いと指揮者
映画について付言すると、「ハリーポッター」シリーズは音楽家にとってのテキストだと言っても過言ではない。魔法使いの腕と指と体の使い方が指揮の参考になる。魔法使いが人を幸せにするポジテイブな術を使う時と、攻撃的でネガテイブな術を使う時は手首や指の動かし方が明確に異なる。金管楽器や木管楽器の音量をちょっとだけミュートしたいとき、反対に特定のパートの音量を少しだけ上げたいとき、ミリ単位の所作で指示を出せれば魔法使いの仲間入りだ。⇒そういう目で映画をみれば、別の楽しみが生まれそう。


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