サハラマラソンを10年連続で走り、さらに世界の過酷な砂漠マラソン、ナミブ砂漠、ゴビ砂漠、アタカマ砂漠を完走。さらにラップランド、南極を一年で走破。日本人で初めて 4Deserts Grand Slam + の称号を獲得した女性。(2019年時点で8名獲得。うち女性2名)

編集:私は10年前のサハラマラソンで出会いました。スタートしたあと跳ねるように楽しく走る後姿を見て、みんなは厳しい顔しているのにこの方凄いなと思った記憶があります。その後はここにあるように日本を代表する砂漠マラソンの第一人者になられました。でも素顔は笑顔の素敵な普通のお嬢さんです。

4Deserts Grand Slam+とは

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この称号を獲得するために費やした時間やお金たるや…。
Photo Credit: Racing The Planet


Racing The Planetが主催する自給自足(250km/7日間)の砂漠レース(ナミブ砂漠、ゴビ砂漠*、アタカマ砂漠)、そして、このうち2レースを完走した者がThe Last  Desert(南極)に挑戦することができます。この4レース全て完走して初めて4 Deserts Grand Slamの称号を獲得することができます。

4 Deserts Grand Slam+は、毎年開催地を変えて主催しているレース(Roving Race=2022年フィンランドのラップランド地方)も加え、1年間で5レース完走して初めて4 Deserts Grand Slam+の称号を獲得します。
2019年の時点で8名(内、女性2名)が獲得していました。

*2022年はゴビ砂漠の代替地、ジョージアで開催


なぜ目指そうと思ったのか

2018年のサハラ砂漠マラソンで出会った日本在住のウェールス人の影響です。この方はRacing The Planetが主催するレースのみならず、世界中で開催されているステージレースにほぼほぼ全て参加しているという強者で、私がサハラ砂漠マラソンにだけ毎年出続けていると知ると、、

世界にはもっとすごい絶景がたくさんある。
他のレースにも出てみろ。

と言われ、それも確かに一理あるな、、と。
2019年のサハラ砂漠マラソンで知り合ったウルトラマラソンの猛者Mori Moriが次は4 Deserts Grand Slamの年間優勝を狙っているとレース後のバス移動中に話していて、あ、それも面白そうだなと。調べてみると日本人女性でこれを成し遂げた人はまだ誰もいないようなので、せっかくだからこれに挑戦してみようかなと思ったわけです。(どうせ年間優勝は狙えないしw)


そうと決まったらただ行動あるのみ(Just Do It)

となると、レースが開催される5月から12月までの8ヶ月間で5レース、1レースにつき2週間ほどのスケジュールを空けておく必要があります。

毎年サハラ砂漠に2週間ほど出かけるのは恒例行事だとめちゃくちゃ理解を頂いていた当時の勤務先もさすがに年間20日の有給休暇以上の休みを取らせてもらうのは難しいかなと、4 Deserts Grand Slam+挑戦を決めた瞬間から退職を決意しました。1年間のサバティカル休暇を自分で勝手に取ったもんだよなーって気分でいたんですけどね、当時は。1年間ステージレース三昧でお腹一杯になったら、翌年に社会復帰するかくらいに思っていました。

その年もサハラ砂漠マラソンにも出場するつもりだったので、2020年3月末退職を計画し、そのつもりで着々と準備を進めていきました。特にレースエントリー代などの資金繰りですね。

想定外の出来事が起きる

2020年、年が明けてから何だか怪しげな雲行きになってきました。そう、新型コロナウィルスが世界中に猛威を振るいはじめ、世界各国の国境がバタバタと閉ざし始め、サハラ砂漠マラソンはもちろんのこと、Racing The Planetのレースも開催されるのか何だか微妙な空気になりました。

でも予定通り、3月末をもって退職したい旨を2月末に上司に伝えました。有難いことに惜しんで頂き、私のやりたい事、決断について理解してもらえ、この情勢だとレース開催されないかもしれませんよ、その時はどうするのですか?と心配までさせてしまいました。

が、まあなるようになるさと、予定通り退職。

そして、上司が危惧したように2020年のレースは全て延期となりました。じゃあ、仕事しようかな?とも思ったのですが、このパンデミックが落ち着き、レースが再開した時にどこかの企業で働いていたら、また退職せねばならず、、。というか、就職と退職の労力を考えると、このままプー太郎の方が良いのではないかなと面倒くさがりの私は思ったわけです。

その間に日本中を旅し、日本の魅力を再発見し、城好き、日本史好きになったのは思わぬ副産物でした。(だったらその間しっかりトレーニングしておけばよかったんじゃね?というツッコミは無視させて頂きます。)

2022年よりついにレース参戦、コロナ禍ならではの難しさが、、

2021年は新型コロナウィルスのワクチン開発、接種が進み、制限がありながらも徐々に海外へ渡航できるようになりました。

この年はRacing The Planetもジョージア、ナミビアでのレースが再開されました*。この時に出場しようと思えば出場できました。しかし、2021年は5レース全てが開催されるわけではありません。1年間で5レース全てを完走しなければ意味がないという自分の中での妙なこだわりがあり、2022年に5レース全て開催されることを確認し、ついにレース参戦となりました。

レース再開したのは良いのですが、コロナ禍ならではの難しさがありました。

1. 渡航先での入出国
ころころと変わる渡航先の入国制限、入国条件の最新情報を抑えて、その準備をしておくこと。ペルーでのジャングルウルトラマラソン**を終え、ジョージアへ移動する時のこと、預け荷物が一旦、経由地のマドリードで落とされるため、スペインへの入国が必要と知り、慌てて入国条件を調べて、準備(オンライン登録)しました。そして、チリはアタカマ砂漠でのレースが終えた後、リマとロスで乗り継いでからの帰国でしたが、ここでもリマで一旦預け荷物を落とすとのこと、慌ててペルーの入国条件が前回から何か変更になったか調べましたよ。


2.日本への入国
帰国時に提出する書類、条件等もころころと変わるので注意が必要でした。
8月のラップランドでのレース終了後、帰国前のPCR検査を受けたところ、なんと陽性判定(無自覚、無症状)となり、予定通り帰国できずに、現地での滞在延長を余儀なくされました。その後、3回目の検査でようやく陰性になり、予定より1週間遅れての帰国となりました。その1週間後にワクチン接種済みであればPCR検査(陰性証明)不要で日本へ戻れるようになったというタイミングの悪さに思わず笑うしかありませんでした。


3.レース前のPCR・抗原検査
ナミビア、ジョージア、ラップランド、アタカマではレース前に検査を受けて陰性であることを証明する必要がありました。ジョージアの時は、ドイツ(フランクフルト)でバックヤードウルトラのサポートからの、ペルーでジャングルマラソンと移動が多く感染リスクが非常に高い状態にいたので、陽性になってしまったらどうしようとかなりヒヤヒヤしました。眉唾かもしれないけれども、検査前にイソジンで鼻と喉のうがいしましたわ。

ここで陽性になってしまうと、レースに出場することができずにDNS(Do Not Start)となってしまいます。実際、ラップランド、アタカマのレースではレース前の検査で陽性となりレースで出場できなかった選手がいました。こんなことで計画が頓挫してしまうのは悔しすぎます。いつも神に祈るような気分で検査に臨んでいました。


4.レース中の感染リスク
今回、最大のピンチを迎えたのはラップランドでのレースでした。レース中にコロナ感染した(咽頭痛、咳、発熱の症状が出た)人が続出し、私がいたテントにも感染者が出てしまい、6名の内3名がその日のうちにDNF(Do Not Finish)となり、療養のためホテルへ収容されてしまいました。

濃厚接触者となってしまった私は検査を受けなければなりませんでした。ここで陽性反応が出てしまえば、レースがこの時点で(次の日はロングステージでもう少しで終わりなのに)終了してしまいます。

検査結果を待つ間は気が気ではありませんでした。外国人がよくやるジェスチャー、Finger Crossやりながら結果を待ったら、運よく?陰性判定となりレース続行することができました。(ただ、帰国前には陽性になりましたが、レース後だからどうでも良いw)


あと、必須装備にマスク、抗原検査キットとかコロナ禍ならではのものが追加。更に、感染予防対策で自分でテントを持ってくることも可能となり、そしてテントを通気が良い状態にするので冷えるだろうと、レース中に預けるドロップバッグに追加で寝袋か毛布を入れることができましたね。このおかげでアタカマ砂漠では命拾いしました。


*コロナ禍の特例でこの年の4 Deserts Grand Slam+は2021〜2023年の間に全て完走すれば称号が与えられることになっている。

**Racing The Planetのレースではないが、パンデミック前にこのレースもエントリーしていて、今年レース再開するってことでついでに参戦した。

それでも楽しい1年間でした

2022年は3月のサハラ砂漠マラソンから始まり、レースから帰ってくる度にバタバタと次のレースの準備をして旅立つという慌ただしくも充実した日々を過ごしました。友人たちからのメッセージの冒頭がだいたい今どこか現在地を聞かれてしまうくらい、海外に出っ放しでした。これも理解ある夫のおかげだと心から感謝しています。

Racing The Planetのレースに参戦して初めて不思議な感覚に陥りました。レースを重ねて、開催地へ行く度に、そこは初めて訪れている場所なのに、なぜか「ただいまー!」と家に帰ってきたような感覚になったことです。

それはレース中に出会った主催者、スタッフ、そして同じ志を持つグランドスラム仲間と毎回再会していたからで、また、出会った仲間が、また別のレースに参加して、再会を果たすってこともちょくちょくありました。


レースに出る度に大切なファミリーメンバーが増えていく
レースに出る度に大切なファミリーのいる場所に戻っていく気持ちになる

それが1年以内の短いスパンで起きました。


ナミブ砂漠では例年以上だと言われる酷暑に苦しめられ、
ジョージアでは初日にいきなり集団ロスト、そして悪天候に苦しめられ、
ラップランドでは延々と続く森の緑と湖の美しさに癒され、
アタカマ砂漠では見渡す限りの絶景に感動しつつも、例年以上の朝の冷え込みのキツさに悩み、
南極では吹雪や積雪で思うように足が動かず、心が折れまくれ、

大変なことがほとんどでしたが、ツラい記憶が濾過されて、今では楽しい思い出のみドリップ抽出されました。


3年間待った甲斐がありました。

さて、この次は?

1年間ステージレースに出まくったらお腹いっぱいになって、もう当分はステージレースに出なくて良いだろうと気持ちになるかと最初は思っていました。

それが全く逆の状態に。
またどこかのステージレースに出て仲間達に再会したい。そんな気持ちになり、気がつけば2023年もポチポチといくつかやってしまいましたw
ということで、来年もステージレースでどこかに行っていることでしょう。


あと、この1年間のこと、話を聞いてみたいって声があるんですが、人前で話すとなるとどうもうまく伝えられないんですよ。

なので、このことをKindleで電子書籍で出版してみようかなという気持ちにもなってます。もちろん、noteの更新もこれから行います。Kindle本の方は、自分では気がつかないことを誰かに掘り起こしてもらって、もっと充実した内容にできないか、既にkindle本を出版している仲間や、編集者の方に色々相談できないかなあと思ってます。

あ、そうそう、2023年でサハラ砂漠マラソンへの参加がちょうど10回となるので、その節目にサハラ砂漠に関するKindle本も書いてみたいなあとも思っています。


と、長々と語りを入れて、ドヤってしまいましたが、たくさんの時間とお金をかけて獲得したタイトルなので、これくらいは許してくださいね。

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南極 The Last Desert 2022

https://note.com/rena_fr/m/m1576a0447280

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