「2030半導体の地政学」太田 康彦日本経済新聞出版刊

半導体を通して今の米中・台湾等の問題を解説しています。
  
・世界で1年間に出荷される半導体チップの数は、1980年には約320億個だったが2020年には1兆360万個に膨れ上がった。2030年までには2兆~3兆個に達するとの見込み。まるで人間社会が半導体に埋め尽くされるかのようだ。

・「半導体に魅せられて」著者が記者として半導体に興味を抱いた経緯。
・「半導体3つの性格」。半導体の「描く」「つくる」「使う」の3つについて。
・「台湾のTSMC争奪戦」。台風の目である台湾の争奪戦。
・「見えない防衛線」イージスシステムは部品から見れば日本企業同士の競争。
・「2030年への日本の戦略等」日本の半導体に未来はあるか。

「The World」リチャード・ハース著日本経済出版刊。NO384~NO388「新しい世界の資源地図」ダニエル・ヤーギン著東洋経済刊を合わせて読んでいただければ、世界情勢が更に興味深くなると思います。

こぼれ話。
〇素材でいえば、ウエハーの生産は信越化学工業と、SUMCOが有力で、日本の2社だけで世界シェアの約半分を占める。あまり知られていないが、食品会社の味の素は半導体の素材として欠かせない絶縁材で世界シェアのほぼ100%を握っている。
 
〇2016年7月21日、ソフトバンクグループ会長の孫正義は、英国ケンブリッジに拠点を置くアームを320億ドル(約3兆3000億円)で買収した。アームは半導体チップに特化したファブレス企業だ。極端な言い方だが各メーカーはアームの図面がなければ自社のチップを作ることができない。建築に例えれば、一つのチップを設計する作業は大都市を丸ごと設計するようなものだ。

どんなに力のある設計事務所でも、1社で都市計画全体の図面を描くことはできない。おそらく技術的には不可能ではないが、都市の図面を完成するまでには何年もかかってしまう。これでは納期に間に合わない。ビルや住宅などの細かい部分は出来合いの図面をよそから買ってきて貼り合わせたり、修正したりしながら都市全体の図面を描いていくしかない。アームとは、いわばビルや住宅の図面を設計事務所に売る会社である。
 
2020年9月、ソフトバンクはアームを米国のエヌビデアに売却すると発表した。売却額は400億ドル(約4兆4000億円)で、4年間で25%の利益を得ることになる。孫氏が追い求めていた夢は、半導体ではなく投資利益だったのかと鼻白んだ人も少なくない。
 
〇ナノは10億分の1の意味で、2ナノといえば髪の毛の10万分の1ほどである。

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